「相続した空き家を売ると3,000万円の控除が使える」と聞いて安心していたAさん兄妹。登記費用を節約しようと手続きを工夫したら、確定申告で「この特例は使えません」と言われてしまった!目先の節約が大きな損失に……相続の「順番」が落とし穴でした。
長崎さんの実家でも相続会議
年末年始に福岡の実家に帰った長崎さん。妹・弟に「誰がこの家を相続するか」という話題を出してみたそう。弟さんは「手続き面倒くさそうだったらいらない」と言っていたとか。年末年始に家族で話し合うこと、大事ですね。
ケース:空き家の3,000万円控除を逃したAさん
山梨県内に住む40代のAさん(兄)と妹さんの二人兄弟。数年前の冬にお父様が亡くなり、その半年後にお母様も亡くなりました。
実家は築45年の一戸建て。お父様名義で、両親が二人暮らしをしていた家です。兄妹ともに自分の家があるため、実家に住む予定はなく、空き家に。
「放っておくと草刈りも大変だし、売ろうか」という話になりました。
「登記費用を節約しよう」という判断
Aさんは「相続した空き家を売ると3,000万円の控除が使えるらしい」と聞きます。それなら早めに売ろう、と思いました。
ところが、こんな判断をしてしまいます。
「お母さんが一旦相続すると手続きが増えそう。名義変更の登記も2回になるし、お金もかさみそう。だからお父さんの相続のタイミングで兄妹が直接相続して、売って、お金を半分ずつ分けよう」
いわゆる「換価分割」という方法です。手続きも終わり、実家も無事に売れて一段落——のはずでした。
「この特例は使えません」
翌年の確定申告で、税理士からこう言われます。
「今回、空き家の3,000万円控除は使えない可能性が高いですよ」
空き家の3,000万円控除とは
相続した実家を売る時、売った金額全部に税金がかかるわけではありません。基本的には「儲かった部分(譲渡所得)」だけに税金がかかります。
「空き家の3,000万円控除」は、条件を満たせばこの譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度。
例:1,000万円で買った家を5,000万円で売った場合
- 儲け:4,000万円
- 控除後:4,000万円 − 3,000万円 = 1,000万円だけが課税対象
なぜ使えなかったのか
この特例には厳しい要件があります。その一つが——
「亡くなった方がその家に一人で住んでいたかどうか」
今回のケース:
- 実家はお父様名義
- お父様が亡くなった時点では、お母様が一緒に住んでいた
- つまりお父様は「一人暮らし」ではなかった → 空き家ではない
お父様が亡くなった時点で空き家特例の要件を満たしていなかったのです。
どうすればよかったのか
正解の手順:
- お父様が亡くなった時に、お母様が実家を相続する
- お母様が一人暮らしの状態で亡くなる
- 兄妹がお母様から実家を相続する
- 実家を売却 → 空き家の3,000万円控除が使える
登記は2回必要になりますが、「順番」を正しく踏むことで、3,000万円の控除が使えた可能性がありました。
目先の節約が大きな損失に
登記費用を節約しようとして、3,000万円の控除を逃してしまった——。
譲渡所得の税率は約20%。3,000万円の控除が使えれば、最大600万円程度の節税効果があったかもしれません。登記費用の節約額とは比べものになりません。
まとめ:3つのポイント
- 「空き家の3,000万円控除」は要件が厳しい。自己判断せず専門家に確認する
- 登記費用など「目先の節約」を優先して、大きな節税チャンスを逃すことがある
- 相続には複数の専門家が関わる。トータルで相談できる窓口を持つと安心
「聞いた話をそのまま真に受けてやっちゃう」のは危険。売却を決めたら、手続きの前に一度専門家に相談するワンステップが、結果を大きく変えることがあります。
こんな方におすすめ
- 相続した実家の売却を考えている方
- 空き家の3,000万円控除について知りたい方
- 相続で「換価分割」を検討している方
- 登記費用を節約したいと考えている方

